会 長  土居 利光

 

 

   新しい流れとしての川柳文化

  川柳は、人情や風俗を詠うことを主眼にしている。
 ここでは、ただ心情を暴露するのではなく、想像上での現実感を増し、事柄の重みを織り込み、秘められた情動に色付けすることで、その時代における人々の間の距離(関係性)を認識できるようにする。だから、想像上でのことだが、人々が事柄を体感し、心の中でしっかりとつかみ、自分自身も参加しているような気分を提示する表現様式なのだ。この点からすれば川柳は、いわば、時代の代弁者の立場がある。

川柳は、滑稽・機知・諷刺などを要点とする文芸である。そこには、ある時代にそうだと信じられていること、決まりごとになっているものに対して異を唱えることで、決まりごととは対照的なものを現実の生活のなかで見いださせるような役割や効果を持っている。いわば、時代の観察者や変革者の立場がある。

川柳には、それを取り巻く環境がある。川柳にとっての環境とは、日本の文化にほかならない。一般的に環境とは、生命のあるものにとって、その生存に必要な外側の空間が持つ条件のすべてを言う。だから、個々の生き物にとって、あるいは分類の範疇としての種にとって、環境は異なる。また、生き物は生活することによって、環境に影響を与え、変えていく。我々は、自然に手を加えて創り出してきた物質的文化、それと関連して発達した精神的文化を創り出してきた。こうしたなかでの生活の様式、つまり暮らし方の総称が文化である。川柳は、日本文化の中で生まれ、川柳自体も変遷し、日本文化を変化させもしてきた。

より良い充実した暮らし方をしていくために、我々は自分たちの生活の基盤である文化について考え続けることが必要である。そのためには、文化に対してとるべき態度を確認し、文化の中で生活する自分たちの意義を知り、そして我々の間の適切な関係を構築することを始めなくてはならない。それらを実現するため、川柳の持つ代弁者・観察者・変革者としての立場・役割は大きいと考えられる。

川柳は、誕生して以来、多くの人々によって、その時代の精神に裏付けられて、一定の様式と型をつくり上げて来た。川柳の持つ代弁者・観察者・変革者としての立場・役割を果たすとともに、日本人の心の発露たる文化を発展させていくためには、先人たちの意志や意識を汲み取ることが重要であろう。先人の知恵が詰まった書籍などの川柳に関係する膨大な蓄積は、見えるような形にして初めて、その価値を発揮する。

時代が創り出した膨大な川柳に関する蓄積、これらは川柳資産といってもよいが、川柳文化とはこの蓄積を形成する体系を意味している。短い時間で捉えれば、川柳文化とはモノと人との相互的な繋がりである。そうした繋がりの価値を維持し、新たに構築し、将来につなげていく、このことが現在、喫緊の課題となっている。

川柳資産の保存と活用を基本として、本会は川柳文化の発展に向けて活動していく。これは、人を人間としてきた原動力である「未知の事柄に対する追求」に根ざした活動であり、「新しい流れとしての川柳文化」を創ることにほかならない。

 

 
 

 

令和7年度 川柳文化振興会の今年度の方向性
                                           土居 利光

 川柳文化振興会は、令和6年4月に一般社団法人として設立され、同6月から現体制をもって活動を開始した。同8月に開催された創立記念祝賀会をもって実際の対外的な活動の第一歩を踏み出した。
 令和6年度は初年度であることから、組織に関する規程の補完・拡充といった活動や川柳大会などの内容の充実化などの事業を主に行った。現状の人員数や事業費などを勘案すると、評価できる内容と判断している。
 一方、活動を通して課題が明確になりつつある。それは、会員の確保と事業費の拡充である。そうした中でも、喫緊の課題となっているのは「初代柄井川柳墓所修復」である。これは、現状では当会が現実的な対応が可能となる唯一の組織であることから当会の実施が適確・適正であると理事会で承認され、事業として実施することとしたものである。この事業を通して川柳文化の価値を伝えるとともに、事業と会員や資金の確保などの活動と連携させることが今年度に重点的に行うべき事項である。